倉庫の温度管理はなぜ重要?
考えられるリスクや適切な温度管理方法などを詳しく解説!

倉庫内の温度管理は、保管商品の品質維持だけでなく、企業の生産性やコストにも直結する重要な要素です。適切な温度管理を怠ると、商品劣化による損害や従業員の生産性低下、さらには企業の信頼性の損失など、さまざまな問題が発生します。特に昨今の異常気象や省エネ要請の高まりにより、倉庫の温度管理はより複雑化しています。本記事では、倉庫における温度管理の重要性、リスク、そして効果的な管理方法と適切なメンテナンス方法について解説します。
倉庫の温度管理には空調設備が大きな役割を果たしています。そのため故障リスクを低減するために定期的なメンテナンスを実施する必要があります。ダイキンでは「エアネットサービスシステム」をご提供しており、定期点検の実施に加えて、24時間365日遠隔監視システムによりお客様の空調設備を見守っています。これにより、万が一故障が起きてもすぐに対応できます。省エネ対策にもつながるため、ぜひご利用ください。
倉庫の温度管理の重要性
倉庫における温度管理はビジネスの根幹を支える重要な要素です。
商品の品質を確保する
商品の品質維持において、温度は最も重要な環境要因の一つです。食品ではカビや微生物などの発生を抑制し、医薬品では化学的安定性を保ち、電子部品では湿度と併せて静電気の発生や劣化を防止します。例えば、成分が変質しやすい食品では低温や冷凍温度、精密機器は一定の温度を保ち、湿度が40%~50%と厳格な温湿度管理が必要です。適切な温度管理が出来ていない場合、見た目の変化がなくても内部品質が劣化し、最終的には商品価値の喪失や返品・クレームの原因となってしまいます。
生産性向上に直結する
倉庫内の適切な温度管理は、作業者の生産性に直接影響します。人間が快適に作業できる温度は一般的に24~26℃と言われており、この範囲を大きく外れると作業効率が著しく低下します。夏場の高温環境では疲労が蓄積しやすく、冬場の低温環境では手先の器用さが失われるため、ピッキングやパッキングなどの繊細な作業の精度が落ちてしまいかねません。従業員の健康と安全を守るという観点からも、温度管理は非常に重要な要素です。
倉庫の保管温度帯別の種類と適温
倉庫は保管する商品に応じて最適な温度帯である「保管温度帯」を設定する必要があります。一般的にその保管温度帯によって常温倉庫、定温倉庫、冷蔵倉庫、冷凍倉庫の4種類に分類され、それぞれ管理温度や設備要件が異なります。商品特性を理解した上で適切な倉庫タイプを選択することが、品質保持とコスト効率の両立に不可欠です。
倉庫の種類 | 温度帯 | 保管商品例 |
---|---|---|
常温倉庫 | 外気温と同じ | 日用品、家具、工業製品など |
定温倉庫 | 10~20℃ | 精密機器、医薬品、菓子類など |
冷蔵倉庫 | 10℃以下 | 生鮮食品、特定の医薬品など |
冷凍倉庫 | -18℃以下 | 冷凍食品、アイスクリームなど |
参考倉庫業法第三条の登録の基準等に関する告示の一部を改正する告示について|国土交通省
常温倉庫
常温倉庫は、特別な温度制御を行わない最も一般的な倉庫タイプです。主に日用品、衣料品、家具、工業・金属製品などの保管に適しています。温度は外気の影響を受けやすく、一般的には外気温と同じ範囲で変動します。初期投資が少なく運用コストも低いため、多くの企業が採用している倉庫形態です。
ただし季節による温度変化が大きいため、温度変化に敏感な商品の保管には注意が必要です。夏場の高温多湿環境では、結露による商品劣化を防ぐための換気や除湿対策が重要になります。
定温倉庫
定温倉庫は、年間を通じて一定の温度範囲(通常10℃〜20℃)を維持する倉庫です。主に精密機器、医薬品、菓子類など、温度変化に敏感な商品の保管に適しています。常温倉庫より設備投資や運用コストは高くなりますが、商品価値の維持や品質保証の観点からこうしたコストは欠かせません。特に日本の高温多湿な夏季や寒冷な冬季でも安定した保管環境を提供できるため、高付加価値商品を扱う企業には重要な設備となっています。
冷蔵倉庫
冷蔵倉庫は、-20℃〜10℃の低温環境を維持する専用設備を備えた倉庫です。主に生鮮食品(野菜、果物、乳製品、食肉など)や、特定の医薬品などの保管に使用されます。商品の鮮度を保つことが主な目的で、品目によって最適温度が異なるため、さらに保管温度帯(C3~C1級)が分かれているのが特徴です。
冷蔵倉庫は高い断熱性と精密な温度制御システムが必要なため、設備投資や電力コストが高額になります。また、作業者の健康管理や結露対策など運用面でも特別な配慮が必要な倉庫タイプです。
分類 | 保管温度帯 | 保管商品例 |
---|---|---|
C3級 | -2℃~10℃ | 穀類、菓子類など |
C2級 | -10℃~-2℃ | 生鮮食品、練りもの、冷凍食品など |
C1級 | -18℃~-10℃ |
参考倉庫業法第三条の登録の基準等に関する告示の一部を改正する告示について|国土交通省
冷凍倉庫
冷凍倉庫は、-20℃以下の環境を維持する特殊な倉庫です。主に冷凍食品、アイスクリームなどの長期保存が必要な商品や、冷凍状態のまま流通・販売される商品に使用されます。冷蔵倉庫と同様に、細かく保管温度帯(F1~F4級)が分かれています。
冷凍倉庫は断熱構造と強力な冷凍設備が必要なため、建設コストと運用コストが非常に高く、電力消費量も膨大です。また、作業者の極寒環境対策や霜取り作業など、特殊な管理技術が求められます。食品流通の要となる重要なインフラですが、BCP対策も含めた慎重な運用計画が必要です。
分類 | 保管温度帯 | 保管商品例 |
---|---|---|
F1級 | -30℃~-18℃ |
|
F2級 | -40℃~-30℃ | |
F3級 | -40℃~-50℃ | 冷凍食品など |
F4級 | -50℃ |
空調設備の故障が招くリスク
倉庫における温度管理は極めて重要であり、その多くを担っているのが空調設備です。そのため空調設備の故障や性能低下は、単なる設備トラブルにとどまらず、ビジネス全体に深刻な影響をもたらす可能性があります。特に厳密な温度管理が求められる商品を扱う倉庫では、わずかな温度変化でも多大な損失を招くことがあります。
商品の品質劣化
適切な温度管理が行われていない環境では、商品品質に直接的な悪影響を及ぼします。食品では微生物増殖による腐敗や風味劣化、医薬品では有効成分の分解や効能低下、電子部品では劣化・故障など、商品カテゴリによってさまざまな品質問題が発生します。特に温度変化に敏感な商品では、先述したように目に見える変化がなくても内部品質が損なわれていることがあり、状況によっては在庫の一部処分が必要な場合もあります。温度逸脱の時間と程度によっては、商品価値が完全に失われるため、24時間365日の温湿度監視体制と緊急時の応急体制の確立が不可欠です。
コストの増大
空調設備の故障は、以下のようにさまざまな形でコスト増加を引き起こします。
- 緊急修理費
- 廃棄コスト
- 損害賠償費
- 電気代
- 設備更新費
まず、故障した設備の緊急修理には通常のメンテナンス費用よりも多くのコストがかかるとされています。また、温度逸脱による商品廃棄は直接的な在庫損失をもたらし、特に高価な商品を扱う場合、その損失額は膨大な数字になってしまうことも少なくありません。さらに、空調設備の故障はほかの設備にも負荷をかけ、電力消費量の増加や設備寿命の短縮につながります。加えて、故障や不具合を放置すると、長期的には設備全体の早期更新が必要となり、計画外の大型投資を強いられることになります。このように空調設備が故障すると、さまざまなコスト増大へと直結してしまいます。
生産性の低下
適切な温度管理ができなくなると、作業環境の悪化により倉庫スタッフの生産性が著しく低下します。夏期の空調故障で室温が30℃を超えると、作業効率は通常時と比べて大幅に低下します。空気調和・衛生工学会大会の研究では、温度が1℃上昇すると作業効率が2.1%低下するという研究もあります。このような不快な環境下では集中力の低下によるピッキングエラーの増加や作業スピードの低下が発生してしまうケースも考えられます。さらに、極端な温度環境では健康上の問題から欠勤率が上昇し、人員不足による業務遅延の悪循環が生じます。特に繁忙期の空調トラブルは、オペレーション全体に深刻な影響を与え、通常の処理能力を大幅に下回る状況を招くことがあります。結果的に企業の収益に悪影響を及ぼす可能性が高まるのです。
適切な温度管理を行うための方法
上記のようなリスクを回避するために、倉庫内の温度管理を適切に行う必要があります。この適切な温度管理には計画的かつ体系的なアプローチが必要です。新しい技術を活用した監視システムと定期的なメンテナンスを組み合わせることで、安定した温度環境を維持し、商品の品質保持と業務効率の向上を同時に実現することができます。
先端技術を活用した管理を行う
IoTセンサーやクラウドベースの温度モニタリングシステムを導入することで、倉庫内の温度変化をリアルタイムで把握できます。これらの先端技術は24時間体制で温度データを収集し、異常を即座に検知して自動アラートを発信します。さらに、AIを活用した予測分析により、温度変動パターンを学習し、問題が発生する前に予防措置を講じることが可能になります。これにより最低限の人数で監視できることに加え人的ミスの低減や、より精密で効率的な温度管理体制を構築できるでしょう。
このような先端技術を活用した遠隔監視システムは省力化にもつながります。詳しくは「【事例あり】遠隔監視とは?活用するメリットや導入ポイントを紹介」「省力化とは?ビルメンテナンスにおける空調管理を効率的に実現させるポイントを解説」をご覧ください。
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定期的なメンテナンスを実施する
空調設備の性能を最大限に発揮させるためには、計画的な点検とメンテナンスが不可欠です。フィルター清掃、ダクト点検、冷媒レベルの確認など、専門技術者による定期的な保守作業を実施することで、設備の寿命延長と突発的な故障リスクの低減につながります。特に季節の変わり目や繁忙期前には入念な点検・メンテナンスを心がけましょう。また、設備の稼働状況や修理履歴を詳細に記録することで、将来的な設備更新計画にも役立てることができます。
業務用エアコンの点検について詳しくは「知らないとまずい!業務用エアコンの法令点検の重要性」をご覧ください。
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倉庫の空調設備の適切な温度管理には
ダイキンのエアネットサービスシステムがおすすめ
倉庫の適切な温度環境を保つには、空調設備の正常運転が不可欠です。そのためにも定期的なメンテナンスは必要ですが、メンテナンスを行うには多くの手間と時間がかかってしまいます。そこでプロフェッショナルに任せることで正確かつ効率的な運用が可能になります。
ダイキンでは、「エアネットサービスシステム」というサービスをご用意しております。このサービスでは、専門のサービスエンジニアがお客様の空調設備の定期メンテナンスを実施することはもちろん、空調機を24時間365日クラウドで遠隔監視し、さまざまな空調管理業務をサポートします。
エアネットサービスシステムの特徴
エアネットサービスシステムの特徴としては以下の4つです。
故障時の迅速対応
万が一、空調機に異常が発生した場合でも、遠隔から復旧操作や応急運転設定、緊急出動を行うため、空調停止時間と商品の劣化を最小限に抑えられます。
予防保全の実現
「故障予知」機能により、機器の異常を早期に検知できるため、突発的な故障リスクを軽減します。また夏・冬の本格稼働前に「シーズン前遠隔点検」を実施することで、不具合を早期に発見できるため、シーズン中の故障トラブルを回避できます。
法定点検のサポート
フロン排出抑制法で義務付けられている定期点検をダイキンの有資格者であるサービスエンジニアが無料で実施します。さらに、3ヶ月ごとに必要な簡易点検も大幅に効率化できるため、担当者様の業務負担を軽減し、本来業務に集中できます。
省エネ運用による光熱費削減
省エネ大賞を受賞した「遠隔自動省エネ制御」では、AIが熱負荷を予測し、快適性を損なうことなく消費電力を最適化します。この機能により省エネを実現でき、コスト削減にも貢献します。
このようにダイキンのエアネットサービスシステムは、設備担当者様の点検業務負担を軽減するだけでなく、突発的な故障リスクの低減や省エネによるコスト削減まで実現するサービスです。空調設備の安定運用と効率化実現のために、ぜひこの機会にご相談ください。
詳しくはこちらよりお問い合わせください。
計画的なメンテナンスで倉庫の適切な温度管理を実現
倉庫の温度管理は、商品の品質保持、作業効率の向上、コスト削減において極めて重要です。空調設備の故障は商品劣化、コスト増大、生産性低下、取引先との関係悪化など深刻なリスクをもたらします。これらを回避するためには、IoTセンサーやAIを活用した先端技術による24時間モニタリングと、フィルター清掃や内部点検などの計画的なメンテナンスが不可欠です。特に保管温度帯に応じた適切な温度管理体制を構築し、定期的な点検を実施することで、安定した保管環境を維持し、ビジネスの継続性と信頼性を確保しましょう。
ダイキンでは定期的なメンテナンスを実施する「エアネットサービスシステム」と省エネ対策につながる「レトロフィットメンテナンスプラン」というサービスを提供しています。この機会にお気軽にご相談ください。