グリーンITとは?
グリーンITに取り組む理由と取り組み事例を解説

近年、企業や組織にとって環境への配慮は避けて通れない課題となっています。その中で注目を集めているのが「グリーンIT」です。情報技術(IT)を活用することにより、社会や企業の環境負荷を低減し、脱炭素社会の実現に貢献するこの技術は、ビジネスの在り方を大きく変えつつあります。本記事では、グリーンITの定義から取り組み事例、そしてその重要性まで、幅広く解説していきます。グリーンITに取り組みたい方はぜひ、ご参考ください。
グリーンITとは
グリーンIT(Green Information Technology)とは、情報技術を活用して環境負荷を低減し、脱炭素社会の実現に貢献する技術を指します。
具体的には、「情報技術そのものの環境負荷低減」と「情報技術による環境負荷低減」の2つの側面があります。前者は情報技術そのものを省エネ化することで消費電力を抑えたり、IT機器の冷却効率の向上などを行ったりすることで環境負荷低減を目指します。一方で後者はテレワークやLEDなど、IT技術を活用することで、業務プロセスや設備などを効率化し環境負荷の低減を目指しています。
グリーンITが求められる理由
グリーンITが注目される理由は、地球環境問題の深刻化と情報技術の急速な発展が密接に関連しているためです。気候変動や資源の枯渇、エネルギー問題など、人類が直面する環境課題は年々深刻さを増しており、その主要因の一つとしてCO2排出量の増加が挙げられます。この状況下で、ITセクターは社会のデジタル化を推進する重要な役割を担う一方で、その急速な成長に伴い電力消費量やCO2排出量も増加の一途をたどっています。
日本においては、ITセクターのCO2排出量が全体の約2%を占めるとされていますが、この数字は決して小さくありません。さらに、今後のIT技術の普及と発展に伴い、この割合は急速に増加することが予想されます。このような状況を放置すれば、ITセクターが環境問題の解決に貢献するどころか、逆に問題を悪化させる要因となりかねません。
そこで注目されているのが、情報技術自体の省エネ化や情報技術によって電力消費量やCO2排出量の削減を目指すグリーンITです。
気候変動が進んでいるため
先述したように気候変動の進行は、グリーンITの必要性を強く裏付ける要因の一つです。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の報告によると、世界の平均気温は1880年から2014年までに約1℃上昇しており、このままのペースで温室効果ガスの排出が続けば、2100年までに最大4.8℃上昇する可能性があるとされています。この気温上昇は、海面上昇、異常気象の増加、生態系の破壊など、深刻な影響をもたらす恐れがあります。
そこでITセクターは、この問題に対して二つの側面から貢献できるでしょう。一つは情報技術そのものの環境負荷を減らすこと、もう一つはIT技術を活用して環境負荷削減を行うことです。そのため、地球温暖化を止める一手としてグリーンITが叫ばれています。
企業がグリーンITに取り組むメリット
グリーンITに取り組むことは、地球環境に配慮するだけでなく、企業としてもメリットが多いため、早期に取り組むことを推奨しています。
最適なコスト運用につながる
グリーンITの導入は、企業のコストの最適化に大きく貢献します。
例えば、PCやWi-Fi、データセンターといったIT機器や設備の消費電力を抑えることで、電気代削減につながります。また、AIやIoTを活用した電力使用量の可視化と制御により、オフィスや工場の消費電力を最適化することができるでしょう。さらに、テレワークの推進によるオフィススペースの縮小も、結果として消費電力の削減につながります。
これらの取り組みは、企業の電力コストを大幅に削減するだけでなく、CO2排出量の削減にもつながるため、環境負荷の低減と経済的利益を同時に実現する効果的な方策となっています。
企業の価値向上につながる
グリーンITへの取り組みは、企業の価値向上に大きく寄与します。WWF(World Wide Fund For Nature:世界自然保護基金)の調査によると、環境に配慮した企業の製品やサービスを選ぶ消費者は年々増加しており、2020年には約70%以上に達したとされています。また、ESG投資の観点からも、グリーンITへの取り組みは高く評価されます。環境負荷の低減は、長期的な企業価値の向上につながると考えられているためです。さらに、グリーンIT関連の新技術や新サービスの開発は、新たな市場の創出や競争優位性の確立にもつながるでしょう。
このように、グリーンITへの取り組みは、環境負荷の低減に加えて、ビジネスの成長と価値向上を実現します。
グリーンITの取り組み事例
グリーンITの具体的な取り組み事例は、さまざまな分野で見られます。
世界的な企業の取り組み
世界的大手IT企業のA社は、独自仕様サーバーを採用し、データセンターの電力効率を大幅に向上しています。また、冷却水のための工業廃水を用いたり、冷却水のリサイクル、サーバー廃棄時のリユースやリサイクルを行ったりするなど環境に配慮した取り組みを積極的に行っています。
他にも、世界的な大手IT企業のB社は、データセンターの総消費電力を40%削減する目標を掲げているなど、世界的に企業のグリーンITへの取り組みは広がりを見せています。
国内企業の取り組み
日本でも大手IT企業をはじめ、さまざまな企業がグリーンITへの取り組みを強化しています。
例えば、ダイキンでは工場IoTプラットフォーム活用により、開発・生産時の温室効果ガス排出量の削減を実現しました。また、オフィスビルのZEB化(Net Zero Energy Building)実現に向けて積極的に取り組むなど脱炭素化に向けて行動しています。
詳しくは、「ビルも脱炭素化へ!脱炭素の基礎知識と必要性、メリットについて」をご覧ください。
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グリーンITに取り組む際のポイント
グリーンITに取り組む際には、いくつかの重要なポイントがあります。
相応のコストがかかる
グリーンITの導入には、相応のコストがかかることを認識しておく必要があります。例えば、電力効率の良いIT機器への置き換えや、エネルギー管理システムの導入には、初期投資が必要となります。
しかし、これらの投資は中長期的には省エネによるコスト削減や、企業価値の向上というリターンをもたらします。重要なのは、コストを単なる支出ではなく、将来への投資として捉えることです。また、政府の補助金や税制優遇措置を活用することで、初期コストを軽減できる可能性もあります。
このようにグリーンITへの取り組みは、確かにコストはかかりますが、それ以上の価値を生み出す可能性を秘めています。
省エネ対策の補助金制度の活用をご検討されている方は、「補助金情報検索サイト」をご覧ください。
専門家に相談する
グリーンITの導入を成功させるためには、専門家のアドバイスを受けることが非常に有効です。グリーンIT分野は技術の進歩が早く、また法規制などもしばしば変更されるため、最新の情報と専門知識が必要となります。専門家に相談することで、自社に最適なグリーンIT戦略を立案でき、効果的に実施することができます。
また、専門家との連携は、業界内のベストプラクティスの共有や、他社との協業機会の創出にもつながる可能性があります。グリーンITは、一社だけで取り組むのではなく、専門家や他社との協力関係の中で推進することで、より大きな成果を上げることができるのです。
積極的にグリーンITに取り組み、企業の価値向上につなげよう
グリーンITは、情報技術を活用して環境負荷を低減し、脱炭素社会の実現に貢献する技術です。気候変動の深刻化や資源の枯渇といった地球規模の課題に対して、ITセクターが果たすべき役割は大きく、世界的にグリーンITに取り組むことが求められています。ただ、企業にとってもグリーンITに取り組むことで、エネルギーコストの削減、企業イメージの向上、新規事業の創出など、多くのメリットを享受できます。
一方で、その導入には適切な計画と投資、そして継続的な努力が必要です。長期的な視点で捉え、専門家の助言も得ながら戦略的に取り組むことが重要です。
ダイキンでは、グリーンITへの取り組みとして既存ビルのZEB化の提案のほかにも、省エネ対策のサポートサービスを提供しております。空調機の遠隔監視データをもとに最適な省エネ運用を提案する「EneFocus α(エネフォーカスアルファ)」、業務用エアコンの遠隔監視を行い、シーズン前や定期的な検査を行うことで無駄なエネルギー消費防止につながる「エアネットサービスシステム」など、お客様の省エネ対策をサポートします。
特にエアネットサービスシステムでは、「遠隔自動省エネ制御」という新機能を搭載しています。これは空調機の運転データをリアルタイムに収集し、AIで熱負荷を予測。その後、遠隔で空調機の自動チューニングを行います。これにより室内の快適性を保ちつつ、消費電力を最大20%も削減可能です。このように快適性と省エネ性の両立を実現できるため、省エネ対策に大きく役立つでしょう。