フロン排出抑制法における定期点検・簡易点検とは?
内容をわかりやすく紹介

2001年に制定された「フロン回収・破壊法」の流れを受け、2015年に施行された「フロン排出抑制法」。その後も改正が繰り返されており、オゾン層保護と地球温暖化防止の観点からフロン類の排出抑制を目的とした法律です。フロン排出抑制法に正しく対応するには、定期的な点検が欠かせません。しかし、そもそもフロン排出抑制法がどのような法律なのか、定期的な点検では何を見ればよいのかなどを把握していない方も多いのではないでしょうか。今回はフロン排出抑制法のなかでも特に点検義務について、点検の種類や具体的な内容、違反した場合の罰則についてお伝えします。
2020年・2022年の改正内容について詳しく知りたい方は、「2020年の改正フロン排出抑制法により強化された罰則とは?2022年の改正内容も紹介」をご覧ください。
また、ダイキン工業ではフロン排出抑制法への対応をサポートするさまざまなサービスをご用意しています。
管理者の手間を抑えて適切なフロン排出抑制法対応を検討されている際は、ぜひお気軽にご相談ください。
目次
フロン排出抑制法とは?
フロン排出抑制法の正式名称は「フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律」で、オゾン層保護と地球温暖化防止の観点から、フロン類の排出抑制を目的として制定されました。フロンガスの製造から使用、廃棄までの適切な管理、点検や漏えい時の報告などを義務付けた法律です。
2020年に施行された改正フロン排出抑制法では、「機器廃棄時のフロン類の適正な引渡し等」の実施も加えられています。
フロン排出抑制法の対象機器
フロン排出抑制法の対象となる機器は次のとおりです。
- エアコンディショナーまたは冷凍冷蔵機器
- 業務用として製造・販売された機器
- 冷媒としてフロンガスが充填(じゅうてん)された機器
具体的には、店舗やオフィスで使われている業務用エアコン、業務用マルチエアコン、ガスヒートポンプエアコン、設備・工場用エアコン、
スポットエアコン、ターボ冷凍庫などが挙げられます。
フロン排出抑制法の対象となる人
フロン排出抑制法実施の対象となるのは、次の項目に該当する管理者です。
- フロン排出抑制法対象機器を所有・管理している者
- フロン排出抑制法対象機器のリースやレンタル契約をして自己管理している者(ただし、リースの場合は利用者、レンタルの場合は所有者である貸主が対象になるのが一般的)
- フロン排出抑制法対象機器を所有・管理するビル、建築物のオーナー
フロン排出抑制法の実施に伴い管理者に求められる責務
フロン排出抑制法に対応するため、管理者に求められる主な責務は次のとおりです。
- フロン排出抑制法対象機器の適切な設置と使用環境の維持
- フロン排出抑制法対象機器の点検
- フロン排出抑制法対象機器の点検や整備に関する記録と保存
- フロン類が漏れた際の報告
- フロン排出抑制法対象機器を廃棄する際の適切な対応
管理者に求められる責務については、「知らないとまずい!業務用エアコンの法令点検の重要性」で詳しく解説しています。
また、フロン排出抑制法対象機器を廃棄する際は、フロンガスの回収処理が必要です。詳しくは、「フロンガスの回収・再生・破壊のプロセスと環境への影響を徹底解説」をご覧ください。
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フロン点検の種類
フロン排出抑制法の義務である点検の種類は、簡易点検と定期点検の2つです。
ここでは、それぞれの概要、頻度、対象機器、点検内容などについて解説します。
簡易点検
簡易点検は、すべての第一種特定製品を対象とした点検です。第一種特定製品とは、業務用のエアコンディショナー(カーエアコンを除く)及び業務用の冷蔵機器及び冷凍機器であって、冷媒としてフロン類が使用されているものを対象とした点検です。
点検の実施者については特に限定されていません。点検頻度は3カ月に1回以上で、点検内容は次のとおりです。
1. 冷蔵機器及び冷凍機器の庫内温度
2. 製品からの異音、製品外観(配管含む)の損傷、腐食、さび、油にじみ並びに熱交換器の霜付き等の冷媒として充填(じゅうてん)されているフロン類の漏えいの徴候有無
※エアコンの場合は2のみ、冷蔵機器及び冷凍機器は1と2の両方です。
2022年8月に改正されたフロン排出抑制法により、次の条件を満たすことで、これまでの目視による簡易点検から「冷媒漏えい検知サービスによる簡易点検の自動化」が認められました。
条件 | 概要 |
---|---|
診断の実施 | フロン類の漏えいを検知するために必要な計測および診断を、冷媒系統ごとに1日1回以上実施 |
記録と保管 | フロン類の漏えいの有無がわかる計測データまたは診断結果を記録し、1年以上の保管が必要 |
通知 | 診断の結果、フロン類の漏えい、または漏えいの疑いを検知した場合、直ちに管理者へ通知し(※ )、1年以上履歴の保管が必要 |
(※)管理者以外の人が容易に解除できない方法での通知
出典フロン排出抑制法における第一種特定製品管理者の簡易点検について(P4)|経済産業省 環境省
漏えいの検知性能については、次の2点の要件を満たす必要があります。
1. 機種ごとに民間規格で規定された温度や湿度などの条件で試験が行われること
2. 適正な充填(じゅうてん)量の30%の冷媒が漏えいするまでに判定が可能であると確認されること
定期点検
定期点検は、簡易点検の対象機器のうち、圧縮機に用いられる電動機の定格出力が7.5kW以上の機器を対象にした点検です。
点検は、機器の構造や運転方法などについて十分な専門知識がある人が実施しなければなりません。点検頻度と内容は次のとおりです。
点検頻度
製品区分 | 圧縮機の定格出力 | 点検頻度 |
---|---|---|
冷凍冷蔵機器 | 7.5kW以上 | 1年に1回以上 |
エアコンディショナー | 50kW以上 | 1年に1回以上 |
7.5~50kW未満 | 3年に1回以上 |
出典令和4年度改正フロン排出抑制法に関する説明会 改正フロン法の概要 ~第一種特定製品の管理者~(P4)|環境省
点検内容
定期的に直接法や間接法による専門的な冷媒漏えいを検査します。なお、直接法と間接法の概要は次のとおりです。
検査方法 | 概要 |
---|---|
直接法 | 発泡液法、電子式漏えいガス検知法、蛍光剤法などによる点検 |
間接法 | 蒸発圧力等が平常運転時に比べて異常値となっていないかといった、計測器等を用いた点検 |
ダイキン工業では、フロン排出抑制法に則した簡易点検の自動化が可能なサービスを提供しています。
ひとつは、IoT端末を室外機に取り付けるだけで修理記録の一括管理を行い、簡易・定期点検にも対応するアシスネットサービスです。
点検漏れの防止や適正な点検、記録の保管に役立ちます。
また、もうひとつのサービスであるエアネットサービスシステムでは、当社製の機器について、点検や記録の保管といった手間のかかる管理業務を適切にサポートします。空調機の運転状態を24時間365日遠隔監視しながら、有資格者による定期点検の無料実施、簡易点検サポートなどの法令対応を行っています。お知らせメールやAI故障診断により、不具合が見つかった場合の修理対応までスムーズに進められることも、大きな特長です。
点検義務に違反した場合の罰則
前項で挙げた点検義務に違反した場合、その内容によって罰則が科せられます。
点検を怠ったり、点検の記録や保管をしなかったりした場合は、50万円以下の罰金になる可能性があるため、注意が必要です。
フロン排出抑制法で定める罰則の詳細は、「2020年の改正フロン排出抑制法により強化された罰則とは?2022年の改正内容も紹介」で解説しています。
しかし、点検の必要性は理解していても、管理者にはほかにも多くの業務があり、点検業務にばかり手間と時間を割くのは困難でしょう。こうしたお悩みをお持ちの管理者の方は、ぜひ前述のアシスネットサービスやエアネットサービスシステムのような外部サービスを活用し、点検業務を自動化することをおすすめします。
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外部サービスを通じた適正な点検で、環境に配慮した運用を
フロン排出抑制法は、製品メーカーをはじめとする関連する業種に対し、フロン類の製造から使用、廃棄に至るライフサイクル全体にわたる包括的な対策を講じるために策定されました。法律の順守は義務ですが、多くのビルや建物のメンテナンス管理者にとって、点検は大きな負担となっていることも少なくありません。
しかし、フロン排出抑制法は、環境問題の解決やSDGsの取り組みにもつながる大切な法律です。資源の効率的な利用や廃棄物の削減は、SDGsの12番目の目標「つくる責任つかう責任」や、13番目の目標である「気候変動に具体的な対策を」に直結しています。地球温暖化の主要な原因であるフロンガスの排出削減を通じて、持続可能な環境への配慮と気候変動への対策を促進しているのです。