故障予知とは?
AI・IoT技術により設備管理を最適化する
新時代のメンテナンス

設備管理は、どの企業でも一定の課題と向き合いながら行われています。
特に空調設備においては、常に故障するリスクが存在し、そのリスクを最小限に抑えつつ、
設備管理の効率と物理的な寿命を最大化する方法が求められています。
近年では、AIやIoT技術の発展に伴い、課題解決に向けた画期的な方法が提示されています。
そのひとつとして、設備が故障する前にそれを予知し、適切なメンテナンスを実施することで、
予期せぬダウンタイムを防ぐ「故障予知」があります。
本記事では、故障予知について解説し、その仕組みと具体的な事例などを紹介します。
企業が抱える設備管理の課題を解決し、より効率的な設備運用を可能にするためのヒントとして、
ぜひ最後までご覧ください。
故障予知とは
故障予知とは、AIが集めたデータを用いて、機器の故障や劣化を見つけ出し、その発生前に対処するための手法です。
膨大な数のデータをAIが学習することで、そのデータが未知のパターンであっても、複雑なパターンであっても、過去のデータをもとに
故障の可能性を判断することができます。
故障予知の手法
故障予知では、多くのデータのなかから、普通とは異なるデータ(異常)を見つけ出します。
データ同士を比較して、ほかのデータと合わないものを見つける手法を用います。
故障予知と似た言葉に「異常検知」がありますが、ほかのデータと違う動きをするデータを見つける技術は共通ですので、
同じ意味合いと理解すればよいでしょう。故障予知に用いられる代表的な手法には、以下のようなものがあります。
外れ値検出
データのなかで、ほかの大部分と異なる値を見つけるための手法です。
例えば、体温のデータを見ていて、大部分の被験者が36〜37℃なのに対し、一部の人が40℃以上であれば、その40℃以上のデータが
外れ値となります。一般的なパターンから乖離(かいり)していることで、異常がある可能性を示唆しています。
変化点検出
データの挙動が急激に変わる点を見つけるための手法です。
例えば、ある工場の機械の動作データを見ていたとします。そのデータが一定の範囲で揺らいでいたところ、
突如として大きく数値が変動した場合、その変動した点が変化点となります。これも、何かの異常がある可能性を示しています。
異常部位検出
データのなかで、特定の部位が異常であることを見つけるための手法です。
例えば、MRIの画像を見ていて、そのなかの一部分だけがほかと異なる色をしていたとします。
その異なる色の部分が異常部位であり、何か異常が含まれる可能性を示唆しています。
故障予知システム導入のフロー
故障予知システム導入の一般的なフローをご紹介します。
1. データ収集システムの検討
通信方法やハードウェア設計などの現実の運用状況に合わせて、データを取得するためのシステムの検討を行います。
AIは取得したデータから学習を行い、その結果を用いて将来の故障を予知するため、この最初のステップは重要です。
2. 外付けセンサーの検討
より良質なデータを収集するために必要なセンサーの検討を行います。
一般的にはセンサーの種類の選定、センサーのサンプリングレートの決定、センサー取り付け位置の決定、の順に検討を進めます。
センサーの種類の選定
どのようなデータを取得するかによって、おのずと選ぶべきセンサーの種類が決まります。
例えば、振動や温度、圧力などの物理的なパラメーターを測定したければ、それに適した専用センサーを選ぶ必要があります。
センサーのサンプリングレートの決定
サンプリングレートとは、一定の時間内にデータを何回取得するかを示す数値です。
取得したいデータの性質や必要な精度によって変わります。
センサーの取り付け位置の決定
取得したいデータの種類や機械の構造によって調整します。
3. データの前処理
AIの学習用のデータセットを作成します。具体的には、以下の手順で作業が行われます。
データの自動抽出
故障予知を行うために必要なデータを、大量のデータのなかから自動的に抽出します。
データの成形
自動抽出したデータは、そのままの形式ではAIが理解できない可能性があるため、AIが解析可能な形式に成形します。
4. AIの学習
過去の故障データや運用データなどを用いて、故障の発生パターンやその前兆をAIが認識できるように学習を進めます。
このプロセスを通じてAIは故障を予知するための知識やスキルを習得し、最終的には未来の故障を予測する能力を持つようになるのです。
なお、故障予知による保全は「予知保全」になります。保全には、ほかに「予防保全」「事後保全」があります。
詳しくは、「設備保全とは?業務用エアコンで欠かせない保全業務の重要性を解説」や
「予知保全とは?事後保全との違いや実施のメリットとポイントを解説」をご覧ください。
こちらもあわせてご覧ください。
故障予知の具体的な事例
紹介してきたように、AI技術は故障予知の分野で力を発揮しています。また、IoT技術も同様です。
故障予知の具体的な事例として、ダイキン工業の「エアネットサービスシステム」をご紹介します。
エアネットサービスシステムは、IoT技術を活用したビルやオフィス向けの空調管理サービスです。
「お客さまの快適な空間を、どんな時でも守り続けたい」との思いから生まれ、30年にわたり、より良い快適空間のため、技術を積み重ねてきました。
故障予知や遠隔での応急運転、復旧、点検などが可能で、万一の場合の空調機の停止期間を大幅に短縮することができます。
また、法定点検業務の負担を軽減するなど、管理の省力化にも貢献します。
AI・IoTを活用した故障予知で
設備管理を最適化
本記事では、AI・IoT技術を活用した故障予知の手法から具体的な事例まで紹介しました。
日々多忙な設備管理者にとって、自社の建物内にあるすべての空調設備を細部まで管理し故障を未然に防止することは、決して容易ではないでしょう。
その解決策として、今回紹介したようなAI・IoT技術を用いた故障予知システムの導入をおすすめします。
システム導入は、設備故障に伴うダウンタイムの削減、設備パフォーマンスの向上、ひいては業務効率化にも直結します。
また、限られたマンパワーで適切な管理を行い、電気代を抑えてコスト削減にも寄与します。