フロンガスの回収・再生・破壊のプロセスと
環境への影響を徹底解説

現代の生活のなかで欠かせない存在となっている空調設備。フロンガスは空調設備の冷媒として用いられ、空気中の熱を効率良く運ぶ重要な役割を担っています。一方で、二酸化炭素とは比較にならないほどの温室効果を持ち、気候変動といった地球環境問題を悪化させる脅威にもなっています。
企業における空調設備のメンテナンス管理者にとって、フロンガスの適切な管理は重要な任務です。適切な管理により、フロンガスの排出を最低限に抑え、地球環境への影響をできる限り抑制しなければなりません。
そこで今回の記事では、なぜフロンガスが回収されるべきなのか、そしてその回収方法について詳しく解説します。
空調設備のメンテナンス業務におけるフロンガス管理の重要性を再認識し、必要に応じた対策を見直していきましょう。
フロンガスを回収する背景
フロンガスは、エアコンや冷蔵庫などの冷媒として広く利用されています。一方で二酸化炭素とは比較にならないほどの温室効果を持つことから、大気中に放出されると地球温暖化の大きな要因となります。
このような背景からフロンガスの適切な管理が求められ、日本では「フロン排出抑制法」が施行されています。
この法律は、フロンガスの製造から廃棄までのライフサイクル全般に対して、ガスの回収や破壊などの包括的な対策を実施することを目指しています。
そのなかで、廃棄時にはフロンを含む製品を適切に管理し、フロンガスを専門業者に引き渡すことが義務付けられています。
法律にのっとり、フロンガスは使用後に専門業者によって適切に回収され、環境負荷の低い物質に破壊処理されるか、再利用可能な場合は再生処理が行われます。
以上の一連のプロセスは地球温暖化防止のための重要な取り組みであり、各企業や個人が法律を順守し、環境保護に貢献することが求められます。
フロン排出抑制法について詳しくは、「知らないとまずい!業務用エアコンの法令点検の重要性」をご覧ください。
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知らないとまずい!業務用エアコンの法令点検の重要性
フロンガスの回収処理から
冷媒再生、破壊までのプロセス
フロンガスの回収・再生・破壊のプロセスは複雑ですが、例えばダイキン工業では一連の流れを一元管理できるネットワークシステムを構築しています。詳細は以下のとおりです。
1. 回収処理
冷媒は室内機と室外機の間をつなぐ配管の中を行き来しています。空調機器の修理や廃棄の際には、冷媒が大気に放出されないようにあらかじめ冷媒を回収する必要があります。まず配管を通して冷媒を室外機に集めるポンプダウン作業を行います。その後、専用の回収機を用いて室外機から冷媒を回収します。回収処理に当たっては、機器の種類や台数、回収された冷媒の量などを具体的にデータ入力することが必要です。このデータは、フロンガスの総量管理・適切な処理に欠かせない情報となります。
2. 再生・破壊処理
再生処理では、古い冷媒を再び使用できるようにするために、専門の再生業者によってさまざまな処理が施されます。一般的な再生処理工程は、蒸留塔でフロン類の油を抜き、凝集設備でガスを液化させ、脱水塔で水を除去したあと、出荷検査を経てホルダーに充填(じゅうてん)する流れとなります。
一方、フロンガスの破壊処理は、冷媒を安全に無害化するプロセスです。フロンガスは地球温暖化を引き起こす要因となるため、最も重要なステップと言えます。まず、フロン類を焼却炉に投じてフッ酸と二酸化炭素に分解します。二酸化炭素は除外設備を経てから空気中に放出されますので、残ったフッ酸水溶液に石灰乳を加え、水と蛍石(けいせき)に改質します。そして、沈殿槽で水と蛍石を完全に分離させてから、蛍石を脱水機・乾燥機にかけて、フッ素化学製品の原料としてリサイクルします。
これらのプロセスを順守することにより、フロンガスの取り扱いが法律に準じて行われ、環境への影響を最小限に抑えることを可能にします。
当社は、冷媒の再生処理と破壊処理の環境影響を比較する実証研究結果を公表しています。それによると、温室効果ガス排出量やエネルギー消費量など、どの定量指標においても破壊処理より再生処理の方が低い結果となり、再生処理の方が地球温暖化抑制や資源循環の点から望ましいことが明らかになっています。
フロンガスの適切な管理に向けた
ダイキン工業の取り組み
当社は、フロンガスの適切な管理と地球環境保護に焦点を当てて多くの取り組みを行っています。そのひとつが、フロンガスの回収・再生・破壊の一連のプロセスを一元管理するネットワークシステムの構築です。冷媒の回収量や再生業者が再生した量、破壊業者が破壊した量など、全工程の情報を管理しています。
このネットワークシステムは、空調機器から回収したフロンガスの再生処理と破壊処理の環境影響を比較できる機能も備えています。
これにより、具体的な環境負荷の数値を把握して、定量データをもとにした改善策を考案することも可能となります。
また、当社は日本アイ・ビー・エム株式会社のブロックチェーン技術を用いて冷媒循環のデジタルプラットフォームを実証実験しています。
このプラットフォームでは、冷媒の製造から回収・再生・破壊に至る循環サイクル全体の情報をつなぎ、使用されている冷媒量や来歴、品質の透明性を担保することで、ユーザーの安心感を確保することを目指しています。
2023年6️月現在はシステム開発の実証実験段階ですが、今後は、自治体や民間企業の冷媒再利用促進パートナーと連携して、冷媒管理および品質保証をする再生・回収システムの構築に向けた有効性を検証していく予定です。
当社は空調機器と冷媒の両方を製造する世界唯一のメーカーとして、時代に応じた冷媒に関する課題に対応してきました。今後もフロンガスの段階的削減を目指すのはもちろんですが、世界的な流れであるサーキュラー・エコノミー(循環経済)の潮流に乗り、冷媒を再生・利用し続ける循環型社会への移行にも積極的に取り組んでいきます。
フロンガスを適切に管理するには
もし未回収のフロンガスが見つかった場合、適切な対応が必要です。まず、フロン類は空調機器や冷凍冷蔵機器の廃棄時に、専門の回収業者によって適切に回収されなければなりません。そして、回収されたフロンガスが適切に管理されることにより、環境への影響を最小限に抑えることができるでしょう。フロン類を含む機器を廃棄する際には、必ず専門の回収業者に依頼することが重要です。この手続きを怠ると罰則が科せられる可能性があり、十分な注意が必要です。
なお、当社はこれらの対応をサポートするため、IoT機器を室外機に取り付けるだけで遠隔からの空調管理が行えるサービスを提供しています。具体的には運転データを収集して運転異常検知や累積運転時間の把握を行い、空調設備の維持管理や、忘れがちな定期点検のサポートを実施しています。
このようにフロンガス未回収の空調機器等が見つかった場合には、適切な回収と管理、法令順守、そして必要に応じて専門のパートナーからのサポートを受けることが大切です。
フロンガスの適切な管理のために
専門のパートナーへの依頼を
本記事では、フロンガスの回収・再生・破壊という重要なプロセスと、それに関連する対策について紹介しました。
地球温暖化の一因となるフロンガスは、法的な規定によりその取り扱いが厳格に定められています。企業の空調設備メンテナンス管理者は、フロンガスを適切に管理する重要な責任があります。しかしながら、日々忙しいスケジュールをこなす管理者にとって、自社の建物内にあるすべての空調設備を細部まで管理することは、決して容易なことではないでしょう。
このような課題を解決するひとつの方法として、信頼できる外部サービスの利用があります。
例えば当社が提供する「アシスネットサービス」は、IoT端末を空調設備の室外機に取り付けるだけで、業務用空調設備の運転データや修理記録などを簡単に収集。空調設備の一括管理が可能になるサービスです。空調設備の運転時間の見える化や中長期の修繕・機器更新の予算化などまで、包括的なサポートが、わずか月額600円〜でご利用いただけます。
「アシスネットサービス」について、詳しくは以下よりご覧ください。
フロン点検に加えて、故障予知や遠隔での応急運転、復旧、点検など
空調機の停止期間を大幅に軽減する「エアネットサービスシステム」もあります。